来し方⑥ ~ 脱出

家も、○○市も出たい。

切実な脱出の願いだったのだろうが、その当時は感情失調症だったので、ぼんやりとそうすべきなことを思い、行動した。

まずは地方の大学に行くこと。

受からなかった。

合格したのは、都内の私立だけ。

私の住む町は、都内まで通学できる範囲にあった。

・・・

ならば、寮生活だ。

 

目論見は成功し、私は大学の寮生になった。

感情失調症とでもいうべき状態はだいぶ改善していったように思えた。

 

それは

うまく生きられなかった家と故郷を脱出できたこと

酒を飲み、酔っぱらうことで、一時的に心を見ないようにできたこと

寮生活が楽しかったこと

たぶんそういったことが影響していたのだと思う。

 

しかし、逃避にはそれなりの代償があった。

 

何をやっても、自信が持てない

だめだだめだだめだだめだだめだ、そんなんだからだめなんだ、だめだだめだだめだ

・・・・・・・・・・だめなんだよぉぉぉぉぉ

心の奥に沈殿していった自己否定の感情

故に、がんばれがんばれがんばれがんばれがんばれがんばれがんばれがんばれ・・・・

 

酒は、脱出したはずだった負のループを加速させるエネルギーになった。

 

しかし同時に、あがきながらも生き続けようとするエネルギーにもなった。

 

自分が心の奥底で望んでいるもの

物心ついた時から感じていた、大事にしたいもの

あがき続けながらも、死なないで生きようとする理由

それらはとても不鮮明で、その時期は見ようとすることすら、ままならなかったが、とにかく行動しなければと行動した。

そして、そのたび、傷つくのだが、

それでも、生きることをあきらめさせなかった体験が、この時期、いくつかあった。