夢枕獏さんの原点

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この物語は、絶対におもしろい


夢枕獏

作家です。

旅行や釣り格闘技、山、漫画等々

多趣味であり、行動派の作家である。

 

この方の書くものが好きで、一時期はほとんど読んでいた。

読むものがなくなると、新刊が出るのを首を長くして待った。

 

魔獣狩り餓狼伝、キマイラ、獅子の門、黄金宮、荒野に獣慟哭す、大帝の剣

闇狩り師、混沌の城、沙門空海唐の国にて鬼と宴す、大江戸恐竜伝・・・

こうして書いてみるといやぁ、おどろおどろしいですねぇ。

とても紳士淑女の皆様におすすめできるものではございませんか・・・

 

ですが、みなさまタイトルに騙されちゃぁいけません。

獏さんの書くものは基本、あったかいのです。

人情があるのですよ。

 

「ねこひきのオルオラネ」 集英社文庫 COBALT-SERIES

ん?

いきなりほかの話題?

ちがいます。

獏さんの初期の作品で、わたくしが一番好きな作品です。

わたしゃ、この作品や、きらきら星のジッタなんかが獏さんの原点だと思っとります。


キマイラにでてくるホームレスの人たちのやさしさ、あったかさも獏さんの原点の表れだと思うのです。

「ねこひきのオルオラネ」から、少し引用します。

・・・

肉体(にんげん)の持つ精神(エネルギー)の全てが、音となって解放されていった。

(中略)

音が、ゆっくりと、生きもののように形をとりはじめたていた。店内にぶちまけられた音の奔流が、次第に、爺さんのたたきつけるリズムの回りに集まりだした。

よっといで。

よっといで。

それ。

それ。

それ!

ぼくらは一匹になった。

手の届く所に人間がいた。

声の届く所に仲間がいた。

ともだちだ。

ともだちだ。

みんな集まれ。

みんな来い。

みんな幸福せになりたい。

みんな幸福せになればいい!

思い切り幸福せになりやがれ!

全員の鳴らす音が、声が、そう叫んでいるのを、ぼくははっきり聞いた。

(後略)

 

うーん やはり

獏さんの原点です。

多くの作品に獏さんのこの思いがある。

 

ちと長くなるが、

キラキラ星のジッタという本の中の「そして夢雪蝶は光のなか」からの引用

 

(前略)

ぼくの皮膚から先は、ぽかっとあいた、からっぽの世界だった。肌に感じられるのは、人間たちの住む世界までの、遠い距離ばかりだった。はるかむこうで、人間たちが音をたて、さざめきながら、かってにどこかへと流れていくー。

ぼくはとり残されたまま、くやしさ哀しさこりかためて酒をあおる。

「死んじまえ」

ぼくはわめいた。

死んじまえ死んじまえと、何度もわめいてウィスキーをあおった。

誰のことを言っているのか、ぼくにもわからなかった。自分のことであったのかもしれないし、この世の中の人間すべてに対してであったのかもしれない。

(中略)

ぼくが大きくよろけるたびに、道ゆく人が逃げるのがゆかいだった。

(中略)

それ。

逃げろ。

逃げろ。

ーわはぁ

よろける。

さざ波のように人垣がゆれ、、よせて返す。

ゆれているのはぼくだ。

ーどうだぁ。

おれは酔っ払いだぞお。酔酔っぱぱあらいだぞお。

自分の奥からあふれてくる黒い毒を、そのままへどにして路上にまきちらす。

(後略)

 

これも獏さんの原点だと思っています。 

あと、「こころほし てんとう虫」もそう。

この3冊、古本屋とかで見つけましたら迷わずお買い上げください。

「この物語は、絶対におもしろい」

 

ではでは

わたしはこのあと 凪のお暇 を見ます。

失礼いたします。