小説家にして、武道家。
空手をこよなく愛するお方。
その方が描く、仁侠シリーズ。
これがまた、すこぶる、面白い。
紹介文から。
東京のある街に事務所を構えるヤクザの親分・阿岐本雄蔵は、困った人をほっとおけない上、
文化事業好きな性格が困りもの。そのせいで組員たちははこれまで、出版社、高校、病院などの経営再建に携わる羽目になってきた。
そして今回は銭湯。
今回の銭湯話は地味〜、という人もいるが、
私はとっても面白かった。
長くなるが、組長、阿岐本の言い分を聞いてください。
「 (略) 気持ちがいいってことが重要なんだ」
「今の日本人は、嫌なことばかり考えいるからだよ。マスコミのせいもあるだろうな。(略)
そりゃ、国民に警告すること大切だよ。けどね、新聞やテレビを見るたびに悪いことだらけじゃ、いい加減、嫌になるじゃないか」
「だからね、今の日本人はもっと気持ちの良い思いをしなければだめなんだ。日常の中でも何か気持ちの良いことを見つけなけりゃ。そういうものの積み重ねで、世の中の気分ってものができあがるんだ。(略) 」
「風呂に入るなんざあ、どうでもいいと思いがちだ。けどね、そういう心の余裕が必要なんだ。一日に一回、のんびりと湯に浸かる。それで気分も変わろうってもんだ。血行が良くなり、体の芯が温まって健康にもなる。健康になれば、気持ちが前向きになって、さらに世の中も明るく感じられる」
いや、今回は、
今野敏さんの
セントウ論で御座いますな。
もう少しお付き合いください。
「それにね、銭湯ってのは、ただ湯に浸かるだけじゃない。公衆道徳を学ぶ場でもあったわけだ」
「世の中には決め事があるんだ。まあ、難しく考えるこたあないよ。要するにエチケットだ。ガキの頃から銭湯に行っていると、自然と大人たちの振る舞いからエチケットを学ぶことになる。湯船に入る前には体を洗うとか、湯に手拭いをつけちゃいけないとか、頭や体を洗うときに、石鹸や湯を飛び散らかしちゃいけないとか、(略) 人様と一緒に風呂に入るには、いろいろと約束事が必要で、色々と約束事が必要それがつまり公衆道徳ってやつなんだ」
今野さん、銭湯大好きなんだろうな。
そして、
人情、古き良き時代の情緒も、好きなんだろうな、
そんな今野さんの描くものが、面白くないわけがない。
シリーズはどこからでも読めますので、
ぜひ一度手に取っていただけましたら。
あなたが古風なお方なら、ゾッコン間違いなしで御座います。
ちなみに、ポジさんも今野さんのファンらしいです。