来し方⑦ ~世界はきらきらと輝いた

生きることをあきらめさせなかった不思議な体験。

それは、大学寮の屋上で、沖縄グラスのジョッキでビールを飲んでいた時のこと。

ジョッキが、太陽の光できらきらと光っているのをぼんやりと見ていると、光が広  がり、その光に私の全体が包まれた(ように感じた)

えっ、と思って、周りを見てみると、周りのものも、きらきらしているじゃないか。まぶしいとかそういうのではなく、ものがリアルで、光っているように見えるわけだ。

私は下に降りて行って、目をこすったり、頭をたたいたりしながら、同僚の人物を見るとなんと、人も光っているではないか。言っちゃ悪いが風采の上がらない、ダサい大学生が、きらきらした人、輝く人になっている!

私はもちろんそんなことを口にしたら、頭がおかしくなったのか、新興宗教に入ったのかと思われる、という分別は持ち合わせていたので、誰にも言わなかったが、ある実験をしてみようと思いついた。

私は夜の繁華街にいた。

私は田舎者で、偏見の塊のような男だったので、繁華街が大嫌いで(本当です・・その当時は・・・)よくないところ(いわゆる魔窟ですな)と思っていたのだ。であるから、そんなところでは、ものや人がきらきらしないはずだ、と思い、確かめに行った。その繁華街とは新宿(魔界都市新宿)なのだが、そこに行くまでの電車の中でもみんなきらきらしている。で新宿に降り立ってみると、やはりきらきらしているじゃないか。そうこうしているうちに、自分の心もきらきらしていることに気がついた。本当に、何年ぶりの感じだろう…

このきらきら現象は、3日間ほどでなくなり、周りのものはきらきらしなくなったのだが、感情喪失症とでもいうべき心の状態はほぼ解消していた。しかし、反動は大きかったのである。

自己否定の感情が今までの数倍増しで感じられ、自分のことをどうにかしなくてはならないという思いが、かつてないほど強くなっていた。この思いはその後30数年にわたり、私のパートナーとなった。