家族は助けにならなかった。
それまでも甘えられないタイプの母親だったが、家庭訪問事件以降、さらに気持ちに溝ができてしまった。
父親にも祖母にも、じいちゃんにも、話すことはできなかった。
そんな弱っている自分を見せたくなかった。
自分で何とかしなくてはならない。
当時、力道山の空手チョップが幅を利かせる時代だったし、タイガーマスクの活躍にワクワクしていたし、何より、実在の人物たる大山倍達主人公の「空手バカ一代」が人気だったころだ(99%フィクションであったことを後に知ることにはなるが)!
そうだ、今の俺の苦境は俺の病弱な体からきている(そう思い至るには、当然の時代背景ではあった)
俺は強くなりたい。強くなるには空手だ!
そして、次の言葉が私の呪文となった。
空手をやって健康に、みんなに好かれる人になる。
私は私の世界を変えたかった。