来し方⑤ ~ 私は世界を構成する歯車ではなかった

高校生になった。
山に興味があったので、山岳部に入った。そこに同じ中学からのメンバーが2名いた。そのうちの一人が意地悪い奴で、私はその男に傷つけられた。
やはり私は傷つきやすかった。
その男のこともあり、私は山岳部から生物部に移籍した。そこで友達もでき、学級でも仲の良い友達ができた。
地味だが、楽しい高校生活だったといえるだろう。
しかし、

それがいつからだったのか、

何が原因だったのか、

はっきりしないのだが、いつしか私は、2つのことに悩むこととなった。

ひとつは、世界は自分を抜きにして、しっかり、順調に、複雑な機械を構成する歯車たちのように在り、動いている。

どの歯車一つ欠けてはいけないのだが、自分はその中の歯車ではないという感覚。

もう一つは、何の感情も、嘘っぱちだとしか感じることができない感覚。

世界が変わった日から、ずっと抱き続けてきた、生き延びなければ、という恐れ、人に認めてもらうためにもっともっと自分を変えなくてはいけないという自己否定の感情すら、たぶん深いところに沈殿し、私の心は潤いがなく、まるで砂漠のようだと感じる日々があった。

私を覆うこの世界を変えるきっかけは、いろいろあったが、虚無とでもいうべき世界へ光をもたらしたのは不思議な体験だった。