へりさん
数少ない友人の一人だ。
最近へりさんの娘さんの結婚式があった。
3月に挙式、披露宴をする予定だったのが、
コロナで延び延びになり、11月に双方の親のみ参列の結婚式にしたそうだ。
鹿島神宮での神前結婚式。
へりさんの嫁さんの実家が鹿島からそう遠くないところにあるので、
結婚してからは毎年鹿島神宮に初もうでに行っていたという。
もちろん娘さんが生まれてからは、一緒に参拝していたのだろう。
へりさん、
「結婚式が延期になり、披露宴もできなかったことは残念だったが、縁あって鹿島の神様の前で式を挙げられたのはよかった」
と、何やらいつになく神妙な顔をしていた。
いい式だったらしい。
普段は娘さんのことを話すことはないへりさんが、
「白無垢で式に臨む娘さんを誇らしく思えた」
と言っていたから驚きだ。
そもそもへりさんは気難しく理屈屋。
よくこんな男と長く付き合ってきているなと、
自分で自分をほめたくもなる。
知識はあるのだが、
固い。
へり、はもちろん本名ではなく、あだ名だ。
へりくだるからへりなのではなく、
屁理屈言いまくるから、へり
そんな男だ。
この男、娘さんに対しても、
「親と子どもは違う個性だ」
などといかにも知った風な知識に縛られ、
十分に愛情を表現をしてこなかったようだ。
「父親はひそかに見守るだけでいいんだ」
私はそれではさみしいのではないかと内心思っていたのだが、
下手なことを言うと百倍返されるので言わないで来ていたが、
娘さんが家を出たあたりから、どことなく元気がなく、
「結婚式が延びてしまって」という話は聞いていた。
それが、よっぽどうれしかったのだろう、
結婚式の写真を私に見せるのだ。
どれどれと見させてもらうと、
いや、このへりさんが、こんなにうれしそうなことがよく分かった。
やはり鹿島神宮はすごいのだ。
写真からでも、新郎新婦が神気に包まれているのがわかる。
へりさんの言う、
誇らしく思えたというのも十分納得がいった。
よかったなぁ、へりさん。
娘さんのこんなにうれしそうな晴れ姿を見ることができて。
これを機会に少しは、丸くなってくれよ。
これからもよろしくね、へりさん。