小学校勤務の頃
林間学校なんていうのがあった。
軽井沢に行った。
軽井沢だよ、すごいだろう、というには、
かなり年期の入った市の施設が宿泊先だった。
で、その施設には、噂があった。
今だから語れる。
匿名だから語れる。
怖い噂、である。
もちろん、そんなうわさは、聞かされていないし、
知ったとしても、子供達には極秘だ。
知らなかった時のことである。
・・・・
それは、私が、担任としてではなく、
助っ人として林間に同行したときのことである。
林間の目玉として、
肝試しがあった。
敷地内を一周するのだ。
助っ人の教員は、要所要所で、
子どもたちの安全を見守る=お化け役になるのだ。
わたしは、中間地点で、見守ろうと(おどかそうと)おもって、
二つ目の角に位置した。
そこには、なんでだか、ロープが張ってあったんだよね。
ほかのところにはもちろんそんなのはない。
ロープの奥は、闇、なんか嫌な雰囲気、
でも、ここが一番驚かせると思った私は、
危険な予兆を無視して、
ロープをまたいで、
闇に入って、
プレイヤーを待った。
少しして、
声が後ろからか、聞こえる、
後ろから聞こえるわけないだろう、
後ろには誰もいないのだから。
でも、後ろからだ、はっきりと。
まずい、やばい、危険だ。
むこうから、プレイヤーがやってくる。
俺は思わず、ロープを飛び越して、プレイヤーのところに行く、
「変な声、だすんじゃないよ!」
「え、なんにもいってないですよ。」
ぶるん、
わかってはいたけれど、
思わず、その子供の手を握ってしまった。
「ちょっとここは危ないかもしれないので、いっしょにいこう。」
もちろん角は見ない。
何とか、角を通り過ぎた私は、
「もう大丈夫だ。」
なにが大丈夫だか、もちろんその児童はわからなかっただろう。
俺はひたすら、お礼を言った。
「ありがとう、ありがとう。」
なんでだか、その児童は、笑っていたが・・・。
そのあと、最高の勇気を振り絞って、
遠くから、その地点を通り過ぎる、
子どもたちを見守っていたが、
何事もなかった。
言っておくが、俺に、霊感はない、と思う。
少なくても、はっきりと見たことは、真田御隠しの湯だけだ。
どちらかというと、音声で聞こえることがある。
そんなのいつも脳内幻想と思っているのだが、
あれは怖かった。
しかし、そんな訴えをする児童も、同僚もいなかった。
でも、長年、その施設の管理人を務めていた方は言っていた。
「この近くの橋(軽井沢大橋)では自殺者が多いんですよ。実は、この施設の裏の林でも…」
何年も、多くの児童が、この施設を使ってきていて、そんな話が、全くなかったのだから、私は狸にからかわれたのだろう。
狸さん、今はどうしているのでしょうか。