一人は孤独。
孤独だろう。
孤独は不幸。
不幸だった。
私は矛盾だ。
孤独を恐れ、孤独に憧れる。
そんな私のうだうだを、
茨木のり子の詩は、
かろやかな、力強い風となって、
あっち方向に吹き飛ばしてくれる。
たとえば、
・・・
一人は賑やか
一人でいるのは 賑やかだ
賑やかな賑やかな森だよ
夢がぱちぱち はぜてくる
よからぬ思いも 湧いてくる
エーデルワイスも 毒の茸も
一人でいるのは賑やかだ
賑やかなにぎやかな海だよ
水平線もかたむいて
荒れに荒れっちまう夜もある
なぎの日生まれる馬鹿貝もある
一人でいるのは賑やかだ
誓って負け惜しみなんかじゃない
一人でいるとき淋しいやつが
二人寄ったら なお淋しい
おおぜい寄ったなら
だ だ だ だ だっと 堕落だな
恋人よ
まだどこにいるのかもわからない 君
一人でいるとき 一番賑やかなヤツで
あってくれ
・・・
まず、ひとりから始まる。
始まりを間違えたならば、
なに一つ何も始まらない。
実は何も始まらないのに、
始まっているかのように、
バーチャルがフル回転。
ループの中で、
ともに生きる。
バーチャルで共に生きるのはどうなんだい?
一人であることが、
この上ない豊穣であること
この上ない至福であること
この上ない冒険であること
この上ない発見であること
この上ない創造であること
そんな地平を、
茨木のり子は夢見た。
あこがれた。
平易な言葉で、
時代に対する、
愛、とまどい、やむにやまれぬ想い、
そして個としての表明を
紡ぎだしてきた 茨木のり子
あなたは今も
精神の最先端です。