一人は賑やか 茨木のり子

f:id:gugugudou:20200617205341j:plain

ひとり立つ 孤高の木の夢


一人は孤独。

孤独だろう。

孤独は不幸。

不幸だった。

私は矛盾だ。

孤独を恐れ、孤独に憧れる。

そんな私のうだうだを、

茨木のり子の詩は、

かろやかな、力強い風となって、

あっち方向に吹き飛ばしてくれる。

たとえば、

・・・

一人は賑やか

                                 茨木のり子

一人でいるのは 賑やかだ

賑やかな賑やかな森だよ

夢がぱちぱち はぜてくる

よからぬ思いも 湧いてくる

エーデルワイスも 毒の茸も

 

一人でいるのは賑やかだ

賑やかなにぎやかな海だよ

水平線もかたむいて

荒れに荒れっちまう夜もある

なぎの日生まれる馬鹿貝もある

 

一人でいるのは賑やかだ

誓って負け惜しみなんかじゃない

一人でいるとき淋しいやつが

二人寄ったら なお淋しい

 

おおぜい寄ったなら

だ だ だ だ だっと 堕落だな

 

恋人よ

まだどこにいるのかもわからない 君

一人でいるとき 一番賑やかなヤツで

あってくれ

・・・

まず、ひとりから始まる。

始まりを間違えたならば、

なに一つ何も始まらない。

実は何も始まらないのに、

始まっているかのように、

バーチャルがフル回転。

ループの中で、

ともに生きる。

 

バーチャルで共に生きるのはどうなんだい?

 

一人であることが、

この上ない豊穣であること

この上ない至福であること

この上ない冒険であること

この上ない発見であること

この上ない創造であること

 

そんな地平を、

茨木のり子は夢見た。

あこがれた。

 

平易な言葉で、

時代に対する、

愛、とまどい、やむにやまれぬ想い、

そして個としての表明を

紡ぎだしてきた 茨木のり子

 

あなたは今も

精神の最先端です。